骨組織は骨吸収と骨形成のバランスにより、一定の骨量を保っている。骨代謝は性ホルモンにより制御され、女性は閉経によりエストロゲンが欠乏すると閉経後骨粗鬆症、男性は加齢によるアンドロゲン低下により、老人性骨粗鬆症を発症する。骨粗鬆症の治療法として、エストロゲン補充療法があるが、骨量回復作用は良好であるが、女性生殖器作用から乳がんや子宮がんのリスクが高まることが問題である。骨組織選択的エストロゲン作働薬としてラロキシフェンが臨床応用されているが、適用は女性のみであり、男女ともに服用可能な安全性の高い薬剤が必須となっている。本研究では、カルボラン化合物であるBE360、BE380、BE381を用い、新規骨粗鬆症治療薬の創生を目指している。平成23年度は、女性骨粗鬆症モデルマウスと男性骨粗鬆症モデルマウスを用いて、候補化合物を投与し、生殖器がんリスクを回避し、骨への有効性を示す新規カルボンラン化合物を解析した。その結果、女性骨粗鬆症モデル動物として雌性の卵巣摘出(OVX)マウスを用いた解析では、BE360、BE380、BE381すべてにおいて、OVXと比べ大腿骨骨量の回復が認められた。また、骨形態計測の結果、骨梁幅(Tb.sp)ならびに骨梁数(Tb.No.)の増加、骨梁間隙(Tb.sp)の低下も確認された。子宮重量の変化は認められなかった。さらに、男性骨粗鬆症モデル動物として雄性マウスに精巣摘出(ORX)を施した解析において、BE380とBE381はORXと比べ大腿骨骨密度の回復が認められ、BE360は偽手術マウスレベルまで回復した。また、全てのカルボラン化合物は貯精嚢の重量には影響を及ぼさなかった。本研究により、カルボラン化合物は骨へ選択的に作用して生殖器へのリスクを回避でき、男性と女性の双方に骨選択的に治療効果を発揮する、性差を越えた新規骨粗鬆症治療薬の候補となりうることが明らかとなった。
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