研究概要 |
本年度は,D-サイクロセリン(DCS)生合成遺伝子クラスターの遺伝子(dcsA~dcsH)をそれぞれ破壊したStreptomyces(S.)lavendulae ATCC11924の変異株を作製し,DCS生合成に必須な遺伝子の同定を行った。また,DCSの生合成に関与すると考えられる一酸化窒素合成酵素(NOS)をコードする遺伝子のクローニングを行い,遺伝子破壊実験により,NOS遺伝子のDCS生合成への関与を調査した。 In-frame deletion法を用いた遺伝子破壊により,dcsA,dcsB,dcsC,dcsE,dcsGおよびdcsHの破壊株を作製することができた。各破壊株について,それらのDCS生産をHPLCにより調べた結果,dcsA,dcsB,dcsC,dcsEおよびdcsG破壊株は,DCSを生産しないことが明らかになった。一方,dcsH破壊株はDCSを生産していた。また,dcsA,dcsCおよびdcsG破壊株へそれら遺伝子を相補すると,DCS生産が回復した。dcsBおよびdcsE破壊株については,それらの触媒により合成されると考えられる化合物を添加すると,DCS生産が回復した。これらの結果から,dcsA,dcsB,dcsC,dcsEおよびdcsGは,DCS生合成に必須な遺伝子である一方,dcsHは必須ではないことを明らかにすることができた。また,degenerate PCRを利用した方法により,NOS遺伝子のクローニングに成功し,その遺伝子破壊株を作製した結果,NOS遺伝子はDCS生合成に関与しないことが明らかになった。最終的に,dcsA破壊株へのフィーディング実験により,DCS生合成におけるアルギニンの水酸化は,NOSではなくdcsA遺伝子産物により触媒される可能性を見出すことができた。
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