研究概要 |
本年度は, 抗結核薬D-サイクロセリンの生合成原料であるヒドロキシウレアの供給に関与し, L-アルギニンの水酸化を触媒すると考えられるdcsA遺伝子産物(DcsA)の機能解析を行った。 まず, dcsA遺伝子を発現ベクターpET-28a(+)に挿入し, 構築したキメラプラスミドpET-28a/dcsAを大腸菌BL21(DE3)株に導入した。得られた形質転換株を培養することでDcsAを生産させ, ニッケルアフィニティークロマトグラフィーによりDcsAタンパク質を精製した。興味深いことに, 精製直後のイミダゾール含有バッファー中において, DcsAタンパク質は赤黄色を呈していた。そこで, バッファー置換後, DcsAの吸収スペクトルを測定した結果, 387 nmに最大ピークを認めた。続いて, 10 mMのジチオナイトを添加したところ, 吸収スペクトルが変化し, 402 nmに最大ピークが現れた。さらに, ジチオナイナイト存在下で, COガスを吹き込んだところ, 439 nmにシャープな最大ピークが現れた。これらのスペクトルは, ヘムタンパク質に特徴的なものであることから, DcsAはヘムタンパク質であることが示唆された。そこで, ピリジンヘモクロム法による解析を行った結果, DcsAはヘムbを含むヘムタンパク質であることが明らかになった。また, 基質と考えられるL-アルギニン, あるいは, 生成物と考えられるNω-ヒドロキシ-L-アルギニンのDcsAへの添加は, DcsAの吸収スペクトルに変化を与えた。以上の結果から, DcsAはヘムタンパク質であることが明らかになるとともに, DcsAはL-アルギニンの水酸化を触媒するタンパク質であることが支持された。
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