研究概要 |
本年度は、バクテリオシンに対する自己耐性因子であるBreE(申請時OrfE)と呼称)を中心としたアプローチを試みた。BreEは4回膜貫通ドメインを有すると予測されるタンパク質であり,予備実験の結果から可溶性画分への発現性が弱いことがわかったため,trigger factorとの融合タンパク質としての発現・精製系を構築した。しかしながら,可溶化タグを切り離したBreEの精製・可溶化条件については未だ検討中であり,継続して実験中である。 一方,新たなアプローチとして,以前構築した乳酸菌-大腸菌シャトルベクターpLES003を基に,新たに乳酸菌におけるタンパク質高発現用のシャトルベクターを構築し,His-tag付のBreEを174A株中で発現させ、耐性を付与することのできた菌株の膜画分より,免疫沈降法によらず,His-tgaへのアフィニティーを利用することでBreEと親和性を示すタンパク質を抽出,特定する方法を試みた。ベクターの構築はほぼ終了しており,現在は導入株の構築を進めている段階である。 加えて,遺伝子破壊株構築のため,種々の条件検討を行ったが,174A株が保有するプラスミド上の生合成遺伝子クラスターをdouble crossover法によって直接破壊することは困難であると結論付けた。そこで,まず生合成遺伝子クラスター全体をシャトルベクター上に構築したものを用意し,その後で必要な変異を導入することを試みた。しかし,部分的なクラスターは構築できるものの,クラスター全体を含むプラスミドが,中間宿主である大腸菌を用いた場合には全く取得できなかった。現在,乳酸菌株へ直接導入することによる構築実験を行っている。 また,breEと共に転写され,breEの転写を制御すると考えられていたBreDについて,プロモーターアッセイの結果,breEの転写を正に制御する可能性が新たに示された。
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今後の研究の推進方策 |
抗体調製については,試料タンパク質の十分な量の精製が非常に困難な為,高発現するtrigger factorタグ付きのまま抗体調製が可能と言われる,モルモットを用いた系への変更を計画している。 また,免疫沈降法に限らず,活性に影響を及ぼさないレベルでのタグを付与したタンパク質を乳酸菌株中において発現させ,そのタグによるアフィニティーを利用した実験系も並行することとした。 乳酸菌における遺伝子操作に関しては,今年度において条件検討を繰り返した結果,制限修飾系による排除機構が強力に働いている可能性も考えられたため,damやdcmの欠損株であるE.coli ET12567株やHST04株の利用,PCRによるベクター構築,また制限修飾系の弱い類縁菌を経由した導入法などを新しく検討している。
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