研究概要 |
本研究は遺伝子壊変酵母のミトコンドリアを用いて、アポトーシス実行のトリガーとなるマシナリーである「ミトコンドリア膜の透過性遷移」の分子機構を解明することを目的とする。初年度は透過性遷移に関与する遺伝子を同定することを目指し、これまでに哺乳類において透過性遷移に関与している可能性が報告されている様々な遺伝子の欠損酵母を作製した。Adenine nucleotide translocaseの3つのアイソフォーム(AAC1、AAC2、AAC3)、porinの2つのアイソフォーム(POR1、POR2)、Hexokinaseの2つのアイソフォーム(HXK1、HXK2)、Cyclophilin D(CPR3)、phosphate carrier (PIC)の合計9種類の遺伝子について遺伝子欠損酵母を作製した。作製した各々の遺伝子欠損酵母からミトコンドリアを単離し、透過性遷移の誘導刺激であるCa^<2+>を添加したところ、いずれの変異株のミトコンドリアにおいても野生株のミトコンドリアと同様に透過性遷移が誘起された。このことから、今回欠損させた遺伝子は、いずれもそれ単独では透過性遷移に影響を及ぼさないことが判明した。しかしながら、adenine nucleotidetranslocase、porin、hexokinaseについては、それぞれアイソフォームが複数存在していることから、単一のアイソフォームだけ欠損させても透過性遷移への影響が顕著に観察されない可能性が考えられた。そこで現在、AAC1,2,3欠損酵母、POR1,2欠損酵母、HXK1,2欠損酵母をそれぞれ作製し、これらの変異株から単離したミトコンドリアを用いて透過性遷移への影響を解析している。これに加えて平成23年度は、今回調べた遺伝子以外の様々な遺伝子についても変異株を作製し、透過性遷移の制御への関係性を調べることを計画している。
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