研究概要 |
黄色ブドウ球菌の産生する分泌タンパク質ファミリーSSL (Staphylococcal superantigen like)は免疫回避に重要な役割を果たしていると考えられているが,それらの多くの機能は明らかにされていない.本研究はSSLファミリーの宿主側の標的分子を同定し,SSLと標的分子相互作用の生化学的解析と生理的意義の解析を行い,SSLの免疫回避における役割を明らかにすること,またSSLの持つ宿主側標的分子に対する特異的阻害作用を応用した,新しい抗がん薬,抗炎症薬,免疫調節薬などの創薬を行うことを目的としている. 本年度は,組換えSSLを結合したセファロースビーズを用いて試料中よりSSL結合タンパク質をアフィニティー精製することにより新たなSSLの宿主側の標的分子の探索を行った.その結果,これまでに報告したSSL5がMMP-9に結合しそのプロテアーゼ活性を抑制すること,SSL10がIgGに結合し古典経路による補体活性化を抑制することに加え,SSL6が補体活性化のレクチン経路の開始タンパク質,フィコリンに結合することを明らかにした.現在SSL6がどのようにしてフィコリンの生理的機能を妨害しているか解析を行っている.またこれ以外にも複数の免疫,生体恒常性の維持にかかわるタンパク質がSSLファミリーの標的分子として同定された.現在これらのSSL-標的分子相互作用の生理的意義の解明を行っている.
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