本研究の目的は、「線虫C.elegansの腸細胞内に形成される非酸性大型顆粒の崩壊を指標にした、環境ストレスの感知応答機構における新規分子基盤の解明」にある。研究費交付初年度である平成22年度は以下の成果を得た。 まず、非酸性顆粒の生理的意義を明らかにするために、飢餓ストレスが非酸性顆粒の細胞内動態(形成、崩壊)に及ぼす影響を調べた。その結果、最終齢ステージの幼虫もしくは若い成虫の腸内顆粒は、絶食後数時間で減少すること、また、再給餌によって回復することを見出した。非酸性顆粒が、栄養状態に呼応して可塑的に形成・崩壊するオルガネラである事を示している。次に、非酸性顆粒の形成に必須なHAF-4、HAF-9、LMP-1と蛍光蛋白質との融合蛋白質を非酸性顆粒のオルガネラマーカーとして用いた共焦点顕微鏡による観察の結果、通常飼育条件下では非酸性顆粒上に局在するこれらのマーカー蛋白質が、絶食後に網目状の局在パターンを示す事を見出した。非酸性顆粒が膜を含むオルガネラごと消失しているというよりもむしろ、顆粒構成膜の再編成が引き起されている可能性を示唆しており、興味深い。 上記の解析と並行して、平成23年度以降に開始する予定である、非酸性顆粒の環境応答に関与する遺伝子のスクリーニングに向けて、Feeding RNAiによるスクリーニングの条件を検討した。その結果、haf-9、lmp-1のRNAiをポジティブコントロールとして、腸内顆粒の崩壊の観察しやすい幼虫後期から成虫初期にかけて、腸内顆粒の形成異常を明瞭に観察できる実験条件を確立した。また、市販の線虫RNAiライブラリーには含まれていなかったhaf4 RNAi用のコンストラクトを作製した。
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