研究概要 |
現在、様々な免疫異常を原因とした疾患が増加してきており、免疫異常亢進状態を制御する強力な抗炎症・免疫抑制剤の開発が重要課題となっている。本研究では、免疫応答に重要なT細胞およびマクロファージの活性化におけるプリン受容体の関与と免疫異常亢進状態へのプリン受容体阻害薬の効果をin vitro、ex vivo、in vivoにおいて総合的に検討し、T細胞およびマクロファージに発現するプリン受容体を標的とした新規多角的免疫抑制剤の提示を目標とした。 昨年度、in vitro,ex vivo実験の結果によって、免疫細胞の活性化および炎症反応惹起過程におけるP2X7およびP2Y6受容体の重要性を明らかにした。本年度は、まず、T細胞サブセットへの分化に関与するプリン受容体を検討した結果、制御性T細胞の分化におけるA2b受容体の関与を明らかにした。また、P2X7およびP2Y6受容体阻害薬によるヒトT細胞由来Jurkat細胞の活性化抑制を確認した。さらに、新たにマクロファージ活性化におけるP2Y11受容体の重要性を明らかにした。そこで、免疫過剰亢進モデルマウスに対してP2X7、P2Y6あるいはP2Y11受容体阻害薬を処置した結果、これらの阻害薬により炎症性サイトカイン産生抑制が認められた。加えて、マクロファージにおけるP2X7受容体を介した炎症反応促進にはP2X4受容体の共発現が不可欠であることがわかり、新たな抗炎症薬の標的としてP2X4受容体も示唆された。 以上のように、2年間の総合的検討の結果、P2X7,P2Y6,P2Y11受容体が炎症反応亢進に関与することを明らかにし、これら受容体阻害薬の新規抗炎症剤としての可能性を提示した。
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