アルツハイマー病(AD)治療薬のガランタミンは、アセチルコリンエステラーゼ阻害作用の他に、ニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)の増強作用があり、AD治療効果への関与が示唆されている。一方、ミクログリアはAD誘導因子と考えられる脳内アミロイドβ(Aβ)の貪食機能を有するが、ミクログリアにもnAChRが発現している。そこで、ガランタミンによるミクログリアのnAChRを介したAβ貪食機能への効果を解析した。 ラット初代培養ミクログリアにガランタミンを処置し、Aβ貪食機能を解析した。また脳内にAβプラークを形成し、記憶障害を呈するトランスジェニックマウスにガランタミンを56日間経口投与し、脳内Aβ量と記憶障害への効果を解析した。 ガランタミン処置によりミクログリアのAβ貪食機能が促進した。この促進作用はnAChRアンタゴニストやガランタミンの結合部位であるアロステリック部位に対する阻害抗体の処置により消失した。高濃度のコリンはnAChRのアゴニストとして作用するが、低濃度存在していたコリンを培養液から除去したところ、ガランタミンの促進作用は消失した。Ca^<2+>依存性のアクチン骨格再重合に関わる因子を阻害した結果、ガランタミンによるAβ貪食促進作用は消失した。最後に、トランスジェニックマウスにガランタミンを投与したところ、記憶障害は改善され、脳内のAβ量が減少した。以上より、ガランタミンはコリン感受性を高めてnAChRを活性化し、Ca^<2+>依存性のアクチン骨格再重合を活性化することでAβ貪食機能を促進することが示唆され、脳内Aβ除去にも有効であることが分かった。 本解析により、ガランタミンの新規AD治療メカニズムが明らかとなり、さらにはミクログリアのnAChRがAD治療薬開発における新規ターゲットとなることが示唆された。
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