アルツハイマー病(AD)における最大の危険因子は老化であり、超高齢化が進む日本においてより効果的な治療法の開発は急務の課題である。AD特異的に脳内に蓄積するアミロイドβタンパク質(Aβ)はAD発症の原因または誘導因子として捉えられている。一方、ミクログリアのAβ貪食機能は脳内Aβクリアランスの一端を担うことが示唆されている。本研究では、初年度においてミクログリアに発現するニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)をニコチンやガランタミンにより直接またはアロステリックに刺激することで、Aβ貪食機能が促進されることを明らかにし、AD治療薬開発における新規ターゲット分子としてミクログリアのnAChRを提唱することができた。そこで、骨髄幹細胞からミクログリア様のAβ貪食細胞を調製して移植することができればnAChRの刺激薬に加えてさらなる積極的な治療戦略が開発できると考えた。そこで該当年度においてマウス、ラットおよびヒトから採取した骨髄幹細胞を用いてAβ貪食細胞の調製を試みた結果、高濃度のヒト由来macrophage-colony stimulating factor(M-CSF)を処置すると、ミクログリア様の鉄粒子やAβの貪食機能を有する細胞へ分化・誘導できることを見出した。この結果は、新たなADの治療戦略として、骨髄幹細胞を用いた移植療法の有用性を示唆する重要な知見と考えられ、新たな研究分野の開発を示唆する意義深い結果を考えられる。
|