本研究は、分裂酵母モデル生物を用いて、イノシトールリン脂質制御機構を解明することを目的としている。 本年度の成果として、分裂酵母におけるクラスリンアダプターAP-1複合体の新規アクセサリータンパク質をコードしているits4+/sip1+の生理機能を明らかにすることに成功した。まず、免疫抑制薬FK506と高温に感受性を示す変異細胞であるits(immunosuppressant and temperature- sensitive)変異細胞の原因遺伝子の一つである、クラスリンアダプターAP-1複合体アクセサリータンパク質をコードしているits4+/sip1+遺伝子の同定を行い、sip1変異細胞はGolgi/endosome間の細胞内輸送に異常を示すことを見出した。また、クラスリンアダプター複合体の構成因子であるApm1を過剰発現することにより、sip1変異細胞の細胞内輸送の異常を回復することができることを明らかにした。さらに、Sip1がtrans-Golgi/endosomeにおいてAP-1複合体と結合することにより、協調的にGolgi/endosome間の膜輸送を制御していることを証明し、その成果は米科学誌PLoS ONEの電子版に掲載された。 新たな細胞内輸送制御因子の同定と新規Golgi/endosome間の細胞内輸送の制御機構の提唱は、申請者がすでに見出しているイノシトールリン脂質シグナルが細胞内輸送によって制御されていることを示す知見をさらに発展させる手がかりとなると考えられる。
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