発生過程を統合的に制御する鍵因子として働くWntシグナルの成熟個体における調節異常はガンや生活習慣病などのシグナル伝達病や老化の病態に関与する。一方、硫酸化糖鎖はプロテオグリカンとして細胞表面に存在し、シグナル伝達の調節因子として重要であるため、この合成異常により種々のシグナル伝達が乱れ、発生異常や疾患の原因となる。Wntシグナルの強弱を微細に調節することは、細胞の運命決定、恒常性の維持、代謝調節のために重要であるが、申請者らは、糖鎖暗号の形成に関わる硫酸化糖鎖合成酵素を厳密に制御することが、Wntシグナルの微細調節機構の分子基盤を成す可能性を示し、シグナル伝達病の発症機構の解明を目指す。 平成22年度は、コンドロイン4-O-硫酸基転移酵素-1によって合成される硫酸化構造がWnt-3aの拡散を制御することを明らかにした。この研究成果は、国際雑誌「Journal Biological Chemistry」に掲載され、また、「BMB2010」で発表し高い評価を得た。
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