主に細胞株を用いた昨年度の検討結果から、LPSによるSIGIRR/TIR8発現制御にはTLR4シグナルを介したp38MAPキナーゼ活性化およびSIGIRR/TIR8発現に重要な転写因子Sp1が関与する可能性を見いだした。そこで本年度は、この発現制御機構が健常人から単離したヒト単核球および好中球細胞で観察されるか検討を行った。その結果、細胞株の実験結果と一致して、LPS刺激によりSIGIRR/TIR8のmRNA発現が減少し、その減少はp38MAPキナーゼ阻害剤の前処理により消失した。また、p38MAPキナーゼ活性化剤のアニソマイシン処理によりSIGIRR/TIR8 mRNAの発現が低下した。更に、Sp1阻害剤であるミスラマイシン処理によりSIGIRR/TIR8 mRNA発現が低下したことから、ヒト単核球および好中球においても細胞株と同様なLPSによるSIGIRR/TIR8発現制御機構が存在することが推測された。次に、RAW264細胞にp38MAPキナーゼのsiRNAを導入し、LPSによるSIGIRR/TIR8 mRNA発現への影響を検討した。その結果、コントロールsiRNA導入細胞ではLPS刺激によりSIGIRR/TIR8 mRNAの発現量が低下したが、p38MAPキナーゼsiRNA導入細胞ではその低下が消失した。この結果から、LPSによるSIGIRR/TIR8発現制御におけるp38MAPキナーゼの重要性を裏付けることができた。最後にp38MAPキナーゼとSp1の関連性について、好中球様HL60細胞株を用いたクロマチン免疫沈降法により検討した。その結果、LPS刺激によりSIGIRR/TIR8プロモーター上へのSp1の結合量は減少したが、その減少はp38MAPキナーゼ阻害剤の前処理により消失した。またこの条件下での核内Sp1蛋白質の発現量に変化がなかったことから、LPS刺激により活性化したp38MAPキナーゼがSIGIRR/TIR8プロモーター上へのSp1結合を低下させることを明らかにした。
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