研究課題
本研究では、ヒトの染色体・クロマチン高次構造の制御に関わるエピジェネティクス関連因子群の機能・構造解析を通して、真核生物のクロマチン転写制御機構の分子機構解明とその制御研究を目的とした。第一に、ヒトのコアヒストンH3やがん抑制因子p53を始めとする様々な核内基質を脱メチル化するLSD1について、その酵素活性中心に結合する低分子阻害剤とLSD1との複合体結晶構造解析を行った。その結果、新規阻害化合物とLSD1との複合体共結晶構造の解明に成功し、この阻害剤による脱メチル化阻害反応機構モデルを構造的に明らかにした。また、LSD1による脱メチル化の反応基質となるヒストンH3とp53については、長鎖テイル・ドメインとの複合体化と共結晶構造解析により、LSD1とそれぞれの基質との複合体共結晶構造を明らかにした。この複合体構造解析の結果に基づいて、酵素側および基質のヌクレオソーム側のそれぞれについて相互作用変異体を作製し、生化学的な機能検証を行った。この構造解析と機能検証から、脱メチル化される標的リジン残基を含むヌクレオソームコア粒子をLSD1が認識して脱メチル化するヌクレオソーム複合体モデルを見出した。上記に加え、本年度は研究代表者らがLSD1の構造情報に基づいて取得した阻害剤を細胞解析に用いることにより、LSD1による細胞内転写制御経路を共同解析した。その結果、LSD1の特異的阻害剤が難治性がん細胞の増殖抑制だけでなく、これまで知られていなかった脂肪代謝経路の制御に関わることを見出した。本年度はさらに、クロマチンレベルでのヒストン脱メチル化反応解析に必要な高純度のヌクレオソームコア粒子を簡便かう大量調製するための新規技術を開発した。
すべて 2012 2011
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (5件)
Anal.Biochem.
巻: (印刷中)
10.1016/j.ab.2012.01.010
Nature Communications
Chemistry & Biology
巻: 18 ページ: 495-507
10.1016/j.chembiol.2011.02.009
Biochem.Biophys.Res.Commun.
巻: 411 ページ: 757-761
10.1016/j.bbrc.2011.07.020