ABCA1のC末端切断産物の核移行を調べるために、mycタグを付加したABCA1のC末端(385アミノ酸)タンパク質をテトラサイクリン誘導的に発現する293細胞を作製した。細胞におけるこれらのタンパク質の局在を蛍光染色で観察したところ、主に細胞質に存在しており、核に存在することの確認が難しかったため、C末端タンパク質を発現する細胞を分画して、核画分へのC末端タンパク質の局在をWestern blotting により確認したところ、確かに核にも存在することが明らかとなった。そこで、細胞にdouble-stranded RNA(dsRNA)刺激を与えた時、この核画分に存在するC末端タンパク質の量が変化するかどうかについて調べた。同時に、ABCA1のC末端に核内受容体LXRが結合することが報告されているので、LXRリガンドを加えた場合のC末端タンパク質の局在についても検討した。細胞にABCA1のC末端タンパク質の発現を誘導し、その後dsRNAを加えると、核画分に存在するC末端タンパク質の量が増加した。しかし、LXRリガンドであるTO901317を加えても、C末端タンパク質の量に変化は無かった。これまでにdsRNA刺激が細胞膜に発現しているABCA1の細胞質側C末端部位の切断を誘導することが分かっていたが、この結果は、dsRNA刺激が切断を誘導するだけでなく、切断したC末端部位を核へ移行する反応も促進することを示唆している。
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