非アルコール性脂肪肝炎(NASH)は近年、メタボリックシンドロームに頻発する肝疾患として認識され、肝硬変・肝癌発症リスクが極めて高い疾患であること、患者が急増していることが明らかとなっている。そのため、NASHに対する有効な診断・治療法の必要性が高まっているものの、NASHの病態形成や、NASHから肝硬変・肝癌へと進展する過程の分子メカニズムについては、国内外を問わず、未だ殆ど研究されておらず、その詳細は全く不明である。そこで本研究では、申請者独自の効率的なバイオマーカー探索・絞り込み技術である抗体プロテオミクス技術、および、研究協力者らのグループ等によりNASH様病態を呈することが明らかとなったCDAA食摂餌マウスやMSGマウス、TSODマウスの肝組織をプロテオームレベルで解析することにより、NASH関連蛋白質の同定を試みる。プロテオミクス技術を駆使することによりNASHのバイオマーカーを同定することを通じて、NASHの発症・進展の分子メカニズムを解明し、有効な診断法、治療法の開発に資することを目指す。 本年度、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)あるいは非アルコール性脂肪肝炎(NASH)モデルマウスとしてCDAA摂餌マウスを用い、本病態マウスと正常マウスの肝組織から蛋白質画分の抽出を行い、たんぱく質発現変動解析を行った。上記蛋白質画分を蛍光標識し、正常マウス由来サンプルと病態マウス由来サンプル間で二次元ディファレンシャル電気泳動(2D-DIGE)解析を行い、画像解析により発現変動蛋白質スポットを見出した。さらにスポットからゲルを切り出し、質量分析装置によって含有たんぱく質を同定した。
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