研究課題
生体内の特定の細胞、分子、機能の時空間的な変化を可視化し、画像化する実験手法は「分子イメージング」と呼ばれ、ライフサイエンスの基礎研究のみならず、病態、病因の解明等の医学研究、薬の候補物質の体内動態の解析を通じた創薬研究に大きく貢献している。測定対象と選択的に結合または反応することにより蛍光特性が変化する蛍光プローブは分子イメージングに用いられる有用な化合物である。本研究は、こうした蛍光プローブを開発するにあたり、その蛍光特性を変化する原理として利用できる蛍光物質の会合現象の制御と、受容体蛋白質を測定対象とした際に必須なリガンド分子の開発を基にした研究である。平成23年度は蛍光物質の会合現象の一つである、蛍光物質パイレン二分子が近接した際に引き起こされるエキサイマー蛍光を制御することによる蛍光プローブの開発を行った。具体的には、溶媒の極性により構造が変化する芳香族ヒドロキサム酸にパイレン二分子を導入することにより、その構造変化をエキサイマー蛍光の有無により可視化する分子の開発に成功した。本分子は、溶媒の極性に応じて蛍光が変化する蛍光プローブとして利用が可能である。さらに、前年度報告した蛍光物質クマリンを母核としたプロゲステロン受容体に対する蛍光性リガンド分子に、pH変化や特定のイオン濃度の増大に応じて蛍光特性が変化する機能を付与するため、クマリンを母核とする種々の蛍光プロープの開発を行った。その結果、プロトン、ナトリウムイオンにより蛍光強度、蛍光波長が変化するプローブが得ることに成功した。こうした知見を、先に報告した蛍光性リガンド分子の構造と組み合わせることにより、本研究の目的である「受容体蛋白質との結合前後で蛍光特性が変化する機能」と「外部環境変化で蛍光特性が変化する機能」を併せ持つ蛍光プローブの開発は可能になると考えている。
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