研究概要 |
RXRアゴニストは、PPARやLXRなどのRXRパーミッシブパートナーとRXRのヘテロダイマーを単独で活性化しうるが、最近、構造の異なるRXRアゴニストにより両ヘテロダイマーの活性化能が異なることが報告された。リガンド結合依存的な核内受容体を介した遺伝子発現は、核内受容体とコアクチベータと言われる転写活性化因子複合体である各種タンパク質との結合により制御される。アゴニストに対しアンタゴニスト結合時に遺伝子発現が抑制されるのは、リガンド結合時の核内受容体の立体構造が、コアクチベータに比較してコリブレッサーと言われる転写抑制因子群の結合を優位にするためである。したがって、パーシャルアゴニストであれば、フルアゴニストとは異なったコアクチベータの結合、さらには同程度のefflcacyを示しながら異なる構造のパーシャルアゴニストであれば、コアクチベータの結合選択性などを生み出せる可能姓があり、副作用軽減と言う観点でも興味が持たれた。RXRパーミッシブ機構に基づく異なる遺伝子発現を可能とするRXRアゴニストライブラリーが創製可能と言える。RXRパーシャルアゴニストは、いくつか論文報告されているものの、その薬効について評価したものはない。そのようなことから、本研究では既知のRXRパーシャルアゴニストとは異なる種々のRXRパーシャルアゴニストの創出を行った。RXRアゴニストは,概して1.1.4.4-テトラメチルテトラリン構造からなる脂溶性部位,安息香酸やニコチン酸からなる酸性部位,およびこれらを連結するリンカー部位から構成される.リンカー部位に閉環構造を導入することで,分子構造を剛直化させれば,フルアゴニスト活性化能を示すRXRの立体構造への誘導適合が不完全になり,パーシャルアゴニストになるのではと考えた.デザインした化合物を合成し,レポータージーンアッセイ(RGA)で活性評価したところ,酸性部位にベンゾトリアゾール骨格を有するCBt-PMNが,RXRαに対してefflcacyが60%,EC50値が約500nMであることを見出した.RXRフルアゴニストであるLGD1069(1μM)に対して,RXRアンタゴニストPA452を併用すると10-5MにおいてLGD1069のefflcacyを12%まで低下させるのに対し,CBt-PMNは3.3×10-5Mで70%のefflcacyを与えることから,本化合物がRXRパーシャルアゴニストであることが示された。また、脂溶性部位にアルコキシ基を有するRXRアゴニストNEt-4IPのイソプロポキシ基をイソプトキシ基にすることでRXRパーシャルアゴニスト活性を示すことを見出した.これらの化合物についてPPAR/RXR、LXR/RXRなどのヘテロダイマーに対する活性化能を評価したところ,RXRフルアゴニストであるLGD1069には劣るものの、これらのヘテロダイマーを話性化することがわかった。さらに、これらの化合物についてマウスを用いた血中に濃度測定を行ったところ、30mg/kgで数μMの血中移行性が見られること、さらに血中トリグリセリドを上昇することなく、カラゲニン足浮腫抑制作用を示すことを見出した。
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