研究概要 |
アトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患において利用されているステロイド剤は,有用であるもののその副作用のため用途が限られており,その代替薬が希求されている.上記疾患に対する新規医薬として制御性T細胞分化誘導物質(Treg誘導物質)が注目されているが,そのレパートリーは少ない.そのような中,申請者らはレチノイドX受容体(RXR)を漂的としたフルアゴニストを開発し,それによるTreg誘導能を世界で初めて示した.しかし,RXRフルアゴニストでも血中トリグリセリド上昇などの副作用を生じうる.そこで本研究では,この回避法として有用と思われたRXRパーシャルアゴニストに注目し,その新規創出とその薬効評価を行った.申請者らはこれまでに,強力なRXRフルアゴニストNEt-3IB(6-[N-ethyl-N-(3-isobutoxy-4-isopropylphenyl)amino]nicotinic acid ; 1)を見出しているが,1の3位のイソブトキシ基の変換が可能なため,イソブトキシ基の変換によりRXR活性化能が調節できないかと考え,種々のアルコキシ基を持つ化合物を合成し,活性評価を行った.さらに,1の3位のイソブトキシ基と4位のイソプロピル基を入れ替えた化合物の創出が可能であることを考え,その化合物について4位のアルコキシ基を種々変換することで新たなRXRパーシャルアゴニストの創出が可能ではないかと考えた.アルコキシ基の種々の変換,さらに位置異性体の創出の結果,新規なRXRパーシャルアゴニストNEt-4IB(6-[N-ethyl-N-(4-isobutoxy-3-isopropylphenyl)amino]nicotinic acid : 2)がRXRパーシャルアゴニストであること,さらにNEt-3IBに比べ副作用が少なく,TPA(12-O-Tetradecanoylphorbol 13-acetate)を用いた皮膚炎モデルで有効なことを見出した.また,この研究の過程において,NEt-3IBのメチルエステル体を原料にヨウ素を導入することで,RXRパーシャルアゴニストのみならず,スチルベン構造を有する強力なRXRアンタゴニストNEt-SB(3)の創出に至った.
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