研究課題
血管内皮増殖因子の受容体VEGFR阻害剤は血管内皮細胞の増殖を抑制し血管新生を阻害する。そこでVEGFRとHIF-1αを同時に阻害できるマルチターゲッティング阻害剤は従来のVEGFやVEGFR阻害剤より強力的な病的血管新生阻害活性を示す可能性が考えられる。そこで本研究では、既知VEGFR阻害剤であるアントラニルアミドAAL993によるHIF活性化抑制作用及びその作用機序について解析した。ヒト子宮がん細胞HeLaを低酸素(1%O_2)条件下で培養後、細胞内各種蛋白のレベルをWestern blot法により、HIF-1α及びVEGF mRNAレベルをRT-PCR法により検出した。また、HIFの転写活性はHRE-Lucを安定発現させたHEK293細胞を用いてレポーターアッセイにより、培養液上清中のVEGFの量をELISA法により測定した。さらに、HIF-1αの細胞内局在を蛍光免疫染色法により解析した。低酸素条件下でALL993はHIF-1αレベルの亢進を濃度依存的に抑制した。また、AAL993は低酸素によるHIFの転写活性化を阻害し(IC_<50> ; 6.53μM)、VEGF産生を抑制した(IC_<50> ; 4.17μM)。さらに、AAL993は低酸素によるHIF-1αの分解経路を影響せずにHIF-1α mRNAのレベルを低下することによりHIF-1αの発現を抑制した。このようなAAL993のHIF-1αの発現抑制作用にはERKの活性化抑制が大きく関与しており、VEGFRの非依存的な作用であることが分かった。これらの結果から、AAL993はVEGFRの阻害作用だけではなく、低酸素によるHIF-1αの活性化経路を抑制することにより血管新生を抑制する作用があることが示唆された。
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