具体的内容 リガンドが核内受容体に結合するとタンパク質の構造が全体的に変化する。アゴニストによる核内受容体の活性化はアゴニストのヘリックス12との直接あるいは間接的な相互作用による配座制御が関与している。4-oxoDHAはパーシャルアゴニストであるが、X-線結晶構造解析では、フルアゴニストと同様、カルボン酸がPPARγのヘリックス12と直接相互作用していることから、何故4-oxoDHAのアゴニスト活性がパーシャルなのか不明であった。これを明らかにする目的でNMRを活用した実験を行った。大腸菌により大量発現及び精製した15N PPARγを用いapo型、4-oxoDHA共有結合型、フルアゴニスト結合型の各H-N相関NMR実験を実施した。得られた各スペクトルデータを比較した結果、リガンドのアゴニズム依存的にPPARγヘリックス12上のアミノ酸残基がシフトしている事が明らかになった。これにより結晶構造の位置情報に、NMRシフトを重みとして付与することが可能になった。さらにin silico上ドッキング解析を行った結果、脂肪酸のカルボキシル基は結晶構造のように1点にとどまらず、リガンド結合ポケット内で様々なコンフォメーションをとりうることがわかった。以上の結果から、脂肪酸はリガンド結合ポケット内で活性型コンフォメーションと不活性型コンフォメーションが平衡状態で存在した結果、脂肪酸リガンドがパーシャルアゴニスト活性を示したと考察された。 重要性・意義 PPARγと脂肪酸の相互作用がNMRを活用することにより示された。以上から、生体内のどのような脂肪酸がPPARγを制御しているのかを予測する解析手法を提案することができた。また、ヘリックス12の重要性はPPARγのみならず、核内受容体でも認知されており、核内受容体を標的とした、新しい創薬開発の手法を提案することができた。
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