研究概要 |
アルツハイマー病は加齢に伴ってその発症率が増加するため、高齢化社会を迎える我が国では迅速な対応が望まれている。アルツハイマー病患者の脳では,Aβ(アミロイドβペプチド)などから構成されるアミロイドプラークの沈着が見られるため、Aβの産生に関与する酵素であるBACE1の阻害剤を開発することは、アルツハイマー病の予防・治療に向けた重要な課題であると考えられている。そこで本研究では、高活性なBACE1阻害剤を開発することを目的とするとともに、実用化に向けた低分子量の化合物開発を目指して研究を行なった。 BACE1はアスパルティックプロテアーゼであり、ペプチド型の阻害剤は基質のアミノ酸配列に基づいて設計されることが一般的であることから、本研究においても基質配列に基づいたペプチド型阻害剤の合成を行った。アスパルティックプロテアーゼ阻害研究において確立された基質遷移状態概念に基づき、フェニルノルスタチン(Pns)などを中心とした阻害剤合成を行った。当該年度に、アミノ酸4~5残基程度で構成される小型のペプチド型BACE1阻害剤を合成し、リコンビナントBACE1を用いた活性の評価を行った。また、基質ライブラリを用いたBACE1アッセイを採用し、基質切断部位近傍に適合するアミノ酸をスクリーニングして特定した。側鎖の小さいアミノ酸も数種類特定できており、今後の更なる薬剤設計と構造活性相関に役立てる予定である。
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