研究課題/領域番号 |
22790122
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
大塚 教雄 独立行政法人理化学研究所, 計算分子設計研究グループ, 研究員 (30465968)
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キーワード | 第一原理計算 / 密度汎関数法 / オーダーN法 / 分子間相互作用 / インシリコ創薬 / フラグメント分子軌道法 |
研究概要 |
本研究では、我々が開発して来たオーダーN法第一原理計算手法と大規模分子系量子化学計算手法を、タンパク質-タンパク質機能制御分子(数千から数万原子)の複合体系に適用し、この系における分子間相互作用、環境効果等を明らかにし、新奇なタンパク質機能制御分子のデザイン指針と提案を行うことを目標とする。また研究の過程で、生体系に対する第一原理計算に基づく研究を行うために必要な理論手法を明らかにし、インシリコ創薬スクリーニングにおける化合物最適化手法の実効利用を高める技術基盤の構築を行う。 今年度は、タンパク質-機能制御分子複合体系における大規模系電子状態計算手法((1)オーダーN法第一原理計算(CONQUEST)、(2)フラグメント分子軌道(FMO)法))に関して、(1)は構造緩和の効果、(2)はFMOの3体効果の検討を行った。系として、実験による結合親和エネルギーが報告されているFKBP(FK506-binding protein)とその機能制御分子(10分子)系(約1700原子)を用いた。 (1)では、実験的に構造が分かっている4種のFKBP-制御分子系に関して構造緩和計算を行った。分子間相互作用エネルギーの計算値の実験値との相関係数は、構造緩和前は0.12、構造緩和後は0.98であった。制御分子周辺の構造緩和とタンパク全体の側鎖構造変化の効果が大きい事が分かった。 (2)FMO計算では、1フラグメント1残基(1F1R)、FMO3-MP2/6-31G(d)の計算レベルを用いて3体効果を評価した。実験値との相関係数は0.80であった。これは、1F1R FMO2-MP2/6-31G(d)の0.77、1F2R FMO2-MP2/6-31G(d)の0.79よりも良い結果となる。一方、1F2R FMO2-MP2/6-31G(d)の選択も良い結果であることを示している。 次年度の理論計算による検討事項として、(1)と(2)共に溶媒効果の検討に関するテスト計算を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
オーダーN法第一原理計算(CONQUEST)では、系全体での構造緩和計算を行った事で、新しい知見が得られている。またvan der Waals相互作用を記述できる計算手法を導入し、既にテスト段階に入っており、フラグメント分子軌道計算との比較に向け結果が得られる可能性が高いため。
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今後の研究の推進方策 |
(1)オーダーN法第一原理計算(CONQUEST)では、explicitな溶媒(水分子)を加えた構造(数千から数万原子系)を作成し、オーダーN法計算を行う。この際にオーダーN法の精度(切断半径に対するエネルギーと力の変化、局所基底の影響など)を明らかにしながら計算を行うことが重要になる。 (2)フラグメント分子軌道計算(FMO)法)では、implicitな溶媒(水分子)による量子化学計算を行う。 (3)分割統治分子軌道計算(DC法)では、2次の摂動計算を行う事を目標とする。この際、系の数とサイズを限定する。これはプログラム中のバグ(既に報告修正済)と十分な並列化計算が行えない事の処置である。
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