現行の抗HIV/エイズ治療法の最大の問題である薬剤耐性HIV-1出現を回避するため、新しいHIV-1複製制御法を目指す。その標的分子の条件として、1)宿主因子であり、2)その宿主因子と関わるウイルス性因子は高度/完全に保存されていることとした。本研究では、この2条件に合致する、ウイルス構造タンパク質Pr55^<gag>とウイルス性病原性因子NefのN-ミリストイル化に注目し、その修飾酵素である宿主因子N-ミリストイルトランスフェラーゼ(NMT)を標的とする、HIV-1複製に対する特異性の高い、新しいNMT制御・阻害方法開発のための基礎研究を行う。研究の特色は、複数のNMT isozymeの存在、及び応募者らがこれまで明らかにしてきたリボゾーム局在型NMT、核小体局在型NMT、ミトコンドリア局在型NMTの存在に着目し、これらの各オルガネラ・小器官局在機構の解明と、それに基づいた新しいNMT制御法を目指す点である。 当該年度はNMTのリボゾーム局在の機構解明のための基礎研究を実施した。NMTのアミノ末端領域はリボゾーム局在に重要な役割を果たしていることが分かってきた。特にアミノ末端領域のリン酸化とリボゾーム局在との関連が示唆された。今後もこのNMTのリン酸化とリボゾーム局在における意義についての解析を続ける予定である。またNMTのリボゾーム局在との相互作用タンパク質の探索を行っている。これまでにNMTのアミノ末端領域と相互作用するタンパク質を同定するために必要となる実験材料の構築と実験系の条件検討を行ってきた。次年度はこれらの研究を継続しNMTのリボゾーム局在の詳細な機構解明を進め、新たなHIV複製制御法の提案ができることを目指す。
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