現在のところ、免疫系における胎児期におけるエストロゲン曝露の役割やエストロゲン物皆曝露による影響の評価に関しては、評価が定まっていないのが現状である。この原因としては、哺乳動物では胎児が母体-胎盤-胎児複合体を形成するため、被験物質の影響を評価する際に作用点が複数考えられること、また大量のエストロゲンやエストロゲン様化学物質を投与した場合には、母体側の影響が無視できないことなどがあげられる。そこで本研究では、胎盤特異的にアロマターゼを発現させ、エストロゲン供給できるArom-EGFPトランスジェニック(TG)マウスを用いて、胎児期エストロゲン様物質の免疫系に対する影響を検討し、その詳細な作用メカニズムの解明を行うことを目的として検討を行った。 このマウスについて、胎児期エストロゲン曝露による免疫系細胞プロファイルの確認をする目的で、CD3陽性、CD4陽性、CD8陽性細胞、B220陽性細胞についてフローサイトメトリーによる確認を行ったところ、どの細胞のサブタイプともに野生型マウスと比較してTGマウスで細胞プロファイルの変化は確認できなかった。 また即時型アレルギー反応における胎児期エストロゲン曝露の影響の検討を行う目的で、抗原特異的なIgE抗体を投与した後に、抗原を投与して反応を惹起せる即時型アレルギー反応モデルである受動皮膚アナフィラキシー(PCA)反応を行ったところ、野生型マウスをTGマウス間でPCA反応の程度に差は認められなかった。 免疫系細胞のプロファイル及びPCA反応においては、胎児期エストロゲン曝露による影響は認められなかったことから細胞のプロファイルやマスト細胞の機能に対して、影響を及ぼす可能性は低いことが考えられる。今後は抗原提示を含む系で検討を行うことにより、胎児期エストロゲン曝露による免疫系への影響について検討を行う。
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