研究課題/領域番号 |
22790134
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研究機関 | 京都薬科大学 |
研究代表者 |
西田 健太朗 京都薬科大学, 薬学部, 助教 (20533805)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 味細胞 / 味覚情報伝達 / ATP / アデノシン / エクトエンザイム |
研究概要 |
【背景】味蕾はI-IV型に分類される味細胞から構成されており、それら細胞間における重要な情報伝達物質の一つとしてATPが知られている。以前に申請者は、ヌクレオシド輸送体の一つであるENT1が、II及びIII型味細胞に発現することを明らかにした(Nishida et al, 2013)。さらに、adenosine 受容体の1つであるA2BRがII型味細胞に発現していることを明らかにしている(投稿準備中)、しかし有郭乳頭におけるadenosine生成に関わるヌクレオチド代謝酵素の発現局在については不明な点が多い。そこで本研究では、有郭乳頭におけるヌクレオチド代謝酵素 (ecto-5’-nucleotidase (NT5E)、prostatic acid phosphatase (PAP) 及びecto-nucleotide pyrophosphatase/phosphodiesterase (ENPP) 1-3) の発現局在を解析した。 【結果・考察】有郭乳頭におけるPAP mRNAの発現量は他のmRNAよりも顕著に高かった。一方、NT5E、ENPP2及び3のmRNA発現量は有郭乳頭周辺部位に比べ、有郭乳頭部位で有意に高かった。免疫組織染色によりNT5Eは主に有郭乳頭の味蕾周辺部位に、PAPはI型、III型味細胞において認められた。さらにENPP2の免疫活性は主に味蕾周辺部位に、ENPP3はI型、II型及びIII型味細胞において検出された。これらのことから、ATPはI-III型味細胞に発現するENPP3によりAMPに代謝され、さらにIやIII型味細胞に発現するPAPによりAMPからadenosineまで代謝されることが示唆された。 したがって、ecto-nucleotidasesによるATP代謝システムは味細胞の情報伝達において重要な役割を果たしていると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
味覚情報伝達におけるアデノシンの役割に関して、その受容体の特定及びアデノシン生成経路の解明を順調に明らかにしている。 まず、味細胞におけるアデノシン受容体の発現に関して、これまで不明であったが、本プロジェクトを推進することによりアデノシンA2b受容体が発現しており、さらにアデノシン投与によりA2b受容体のセカンドメッセンジャーであるcAMPの増加を味細胞含有組織で初めて明らかにした。このアデノシン受容体に関する研究成果は学術論文に投稿予定である。 また、アデノシン生成に関与するATP分解酵素の発現に関しては、ENPP3によるATPからAMPへの分解、さらには、PAPによりAMPからアデノシンへの分解に関与することを初めて明らかにした。こちらについても投稿準備中である。 全体の研究計画の内、3年が経ちほぼアデノシンの生理的役割に関する知見が予定通り、明らかになりつつある。
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今後の研究の推進方策 |
現在は味覚行動に対するアデノシンの機能を行動学的に解析している。行動解析は予備実験が多く、時間がかかるが、本プロジェクトの核心部分を明らかにする重要な実験であるため、プロジェクト完了に向けて邁進したい。
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