味蕾において、ATPは味覚情報伝達に重要な役割を果たすことが明らかにされているが、細胞外ATPの代謝機構は未だ不明な点が多い。また、近年ATPの代謝産物であるadenosineが甘味の知覚に関与することが報告され、ATPのみならず、adenosineも味覚機能に重要な役割を果たすことが示された。そこで、本研究では、ラット有郭乳頭におけるATP代謝関連酵素の発現局在について、RT-PCR法、real-time PCR法及び免疫組織染色法にて解析した。その結果、CPにおけるNt5e、Enpp2及びEnpp3の発現量はNTに対して有意に高かった。免疫組織染色によりENPP2の免疫活性は主に味蕾周辺部位に、ENPP3はNTPDase2陽性l型、IP3R3陽性ll型及びSNAP-25陽性lll型味細胞において検出された。さらにNT5Eは主に有郭乳頭の味蕾周辺部位に、PAPはNTPDase2陽性l型、SNAP-25陽性lll型味細胞において認められた。これらのことから、ATPはl型、ll型及びlll型味細胞に発現するENPP3によりAMPに代謝され、さらにl型やlll型味細胞に発現するPAPによりAMPからadenosineまで代謝されることが考えられる。したがって、味細胞外のadenine nucleotide/nucleoside代謝機構において、ENPP3やPAPが重要な役割を果たしている可能性が示唆された。
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