研究課題
マンガン(Mn)曝露によってパーキンソン病様症状が見られることは知られているが、神経細胞へのMn取り込みや排泄の詳しいメカニズムはほとんど明らかになっていない。初年度はMn毒性とMn感受性の関係を明らかにするために、入手できた様々な神経系細胞におけるMn感受性とMn輸送能、輸送機構を比較検討した。Mnに曝露して24時間後の細胞生存率を比較した結果、マウス神経芽細胞(N18TG2)が最も感受性が低く、ラットグリオーマ細胞(C6 glioma)が最も高かった。一方、Mnを添加後24時間のMn蓄積量を比較した結果、ラット褐色細胞腫(PC12)が最も高く、C6 gliomaが最も低かった。各神経細胞のMn感受性とMnの蓄積量にはあまり相関が見られなかったため、神経細胞におけるMn毒性にはその他の重要な因子が存在することが示唆された。今後さらに検討していく予定である。申請者のこれまでの研究により培地に重炭酸を添加するとMnの取り込みが上昇することを見出している。そこで様々な神経細胞のMn取り込みに対する重炭酸の効果を検討した。その結果、ヒト神経芽細胞腫(SH-SY5Y)に重炭酸を添加した際のによるMn取り込み効率の上昇率が最も高かった。亜鉛輸送体のZIP8およびZIP14を介したMnの取り込み効率を重炭酸が促進させることが報告されているため、本細胞においてもZIP8およびZIP14が機能している可能性が示唆された。また、程度に違いはあるものの、全ての検討した神経細胞において重炭酸によるMn取り込み効率の亢進が見られたことから、神経細胞におけるMn輸送にZn輸送体が関与している可能性が考えられた。今後さらに詳しく検討していく予定である。また、神経細胞であるSH-SY5Y細胞にMnを曝露し続けることによってMn耐性細胞の樹立を試みている。樹立に成功すれば、性状解析する予定である。
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