研究概要 |
クリの葉,樹皮,果実の渋皮には加水分解性タンニンが豊富に含まれることが知られており,それらには様々な生理活性が報告されている.一方,クリのイガは厄介者扱いされるだけで全く研究対象とされていないことから,未利用植物素材の有効活用を目的とした検討を行った.昨年度までの成果として,イガの成分精査,ORAC法による抗酸化能評価,チロシナーゼ阻害活性の測定を行った.成分精査ではイガから14種の化合物を単離し,加水分解性タンニン,エラグ酸類を主成分として認めた.また,イガに豊富に含まれるcasuarininを酸分解することで,本研究課題の主目的物であるエラグ酸 3-C-glucosideを得た.活性評価では,ORAC法による抗酸化能評価でプロトカテク酸等に強い活性を認めた他,エラグ酸 3-C-glucosideはエラグ酸の約2倍の活性を示した.また,チロシナーゼ阻害活性では加水分解性タンニンに強い活性を認めた. 上記の結果を踏まえ,本年度はメカニズムの異なる抗酸化活性評価法であるSOD様活性測定法を用いて多角的な評価を行うとともに,エラグ酸 3-C-glucosideについてメラノーマB16細胞のメラニン産生に与える影響を評価した.SOD様活性評価では没食子酸, エラグ酸,加水分解性タンニンに顕著な活性を認め,またエラグ酸 3-C-glucosideにもエラグ酸と同等の活性が確認された.メラノーマB16細胞を用いたアッセイでは,エラグ酸には強い細胞毒性が確認された一方,エラグ酸 3-C-glucosideでは細胞毒性を認めず,さらにコントロールのアルブチンよりも強いメラニン産生抑制活性を示した.また,本化合物を効率的に得る手法の検討では,殻斗の抽出物には加水分解性タンニンを認めなかったことから,イガのみを抽出に用いることで各種成分を効率的に得ることができると考えられる.
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