昨年度において、LPS投与マウスにて血液脳関門(BBB)を介した[^3H]prostaglandin(PG)E_2排出機能は低下していたことが明らかとなった。そこで、LPS投与マウスから、BBBの実体である脳毛細血管を単離し、総可溶性画分タンパク質を調製し、PGE_2輸送担体タンパク質発現量変動を高速液体クロマトグラフィー接続型質量分析計によって解析した。その結果、organic anion transporter3 (Oat3)及びorganic anion transporting polypeptide la4(Oatpla4)の発現量は約30%低下していたものの、multidrug resistance-associated protein(Mrp4)の発現量は有意に変化しなかった。マウスにおいて寄与が示されたMrp4の発現量が変動していなかったことから、タンパク質発現量以外の要因、例えば輸送担体の細胞膜局在性の変動など、がLPS投与時におけるPGE_2排出減弱に関与している可能性が考えられた。LPS投与マウスにおいて、β-ラクタム系抗生物質投与によって[^3H]PGE_2排出がさらに減弱することが示された。そこで、Mrp4発現細胞膜小胞を用い、どのような化合物構造を有するβ-ラクタム系抗生物質がMrp4に対し認識されるかを解析した。その結果、cefotiamやcefmetazole、ceftriaxoneなど高分子量アニオン型セファロスポリンが高い輸送活性を示した。本知見は、BBBを介したPGE_2排出輸送への薬物の効果を考える上で、有用な知見に繋がると期待される。
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