研究概要 |
生体内に投与されたシスプラチン(CDDP)の一部は肝臓でグルタチオン複合体(CDDP-GSH)に変換され、次いで細胞表面酵素によってシステイン複合体(CDDP-Cys)へと変換される。CDDP-Cysは細胞内に取り込まれ、毒性本体と考えられるチオール化合物(CDDP-S^-)へと変換される。CDDPによる腎障害には、CDDP-Cysの尿細管輸送特性が深く関わることが予想されるため、本研究は、CDDP-NAC(N-アセチルシステイン複合体)の尿細管輸送に関わる薬物トランスポータの役割を解明することを目的として実施した。 初年度は、各種培養細胞を用いて、CDDP,CDDP-NACの細胞毒性、尿細管薬物輸送を評価した。細胞株としては、ヒト有機アニオントランスポータ(OATs)又はヒトOCT2を発現させたヒト胎児腎由来HEK細胞、OATsを保持しているフクロネズミ腎由来のOK細胞、近位尿細管上皮細胞の性質を保持するブタ腎由来のLLC-PK_1細胞を用いた。有機カチオントランスポータを発現するLLC-PK1細胞では、CDDPを曝露した時に細胞毒性の指標であるLDHの細胞外への放出が顕著であったことから、CDDPの生体膜輸送には有機カチオントランスポータが関わることが確認された。また、OAT1, OAT3を発現させたHEK細胞では、CDDP-NACの細胞内取り込み速度がコントロール細胞に比べ有意に上昇した。このことから、ODDP-KACの生体膜輸送にはOAT1, OAT3が関与することが示唆された。
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