本研究では、メトトレキサート(MTX)による治療を開始する関節リウマチ(RA)患者を対象に、MTXの薬効に関連することが考えられる遺伝子多型を解析した。また、初回投与3週間後に血漿中および赤血球中のMTXおよびMTX-PG濃度と血漿中および血液細胞中の葉酸類濃度を定期的に測定した。これらのデータと患者の治療経過を総合的に評価した。 平成23年度は、前年度に引き続きMTXを使用しているRA患者150名を新たに登録し、1~2か月毎の外来通院時に、血液試料の提供受けている。これまでに約3000検体を収集した。 遺伝子解析として、これまでの申請者らの研究でMTXの薬効との関連が示唆されるreduced folate carrier(RFC)とgamma-glutamyl hydrolase(GHH)をコードする遺伝子及びMTXのターゲット分子である dihydrofolate reductase(DHFR)とthymidylate synthase(TS)などをコードする遺伝子の多型を解析した。また、血中のMTXおよびMTX-PG濃度を測定した。これらの血中薬物濃度や疾患活動性の経時変化と遺伝子多型の関係を解析した。 結果として、葉酸代謝系における重要な酵素であるDHFRの遺伝子多型について日本人における分布を明らかにした。また、RFC G80A-塩基多型がMTXの薬効と関連していることが明らかとなった。さらに、投与量変更に伴う疾患活動性の変化は、赤血球中のMTXおよびMTX-PG濃度の変化と一致した。 本研究により得られたデータをもとに大規模な臨床試験を実施することで、葉酸代謝系に関連する遺伝子の多形解析でMTXの薬効を予測することが可能となり、治療的薬物モニタリングの指標として、赤血球中MTXおよびMTX-PG濃度を活用することができれば、RA患者の薬物療法を安全かつ効率的に最適化することが可能となる。
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