細胞増殖必須因子であるポリアミンは蛋白質合成を促進することで細胞増殖を促進するが、酸化酵素により分解されると、毒性の高いアクロレイン及び過酸化水素を産生する。これまで脳梗塞の診断はMRI、CT等の画像診断に依存しており、有用なバイオマーカーは存在しなかった。申請者は脳梗塞のバイオマーカーとしてアクロレインが非常に優れていることを提唱および実証し、またアクロレイン除去作用を示す化合物に脳機能改善効果があることを見出した。本研究ではアクロレインの細胞毒性機構の分子レベルでの解明と、アクロレインの毒性を除去する物質の探索を行なった。 1.細胞を400μMのアクロレインに1時間曝露し、その細胞抽出液をSDS電気泳動及で解析した。その結果、2種類の蛋白質が顕著に消失することを見出した。これらの蛋白質をゲルから抽出し、LC-MS/MSにより解析した結果、グリセルアルデヒド-3-リン酸脱水素酵素(GAPDH)及びビメンチンであることを同定した。現在、これらの機能と細胞増殖の関連性について検討中である。 2.アクロレインはチオールやアミンと良好に反応する性質があることから、食品中に含まれる化合物のうち、チオールやアミンを含む化合物や、抗酸化作用があると言われている化合物を選別し、アクロレインと共に培養細胞の培地中に添加し、アクロレインの細胞毒性を除去する作用があるかどうか検討した。その結果、ニンニクの成分であるアリインにアクロレインの細胞毒性を除去する作用が見出された。今後、アリインのアクロレイン毒性解除機構を詳細に検討し、分子レベルで解明する。また、他の化合物にアクロレイン除去作用があるかどうか、さらに検討を重ねる。
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