小児急性リンパ性白血病(ALL)患者における維持療法において、6-メルカプトプリン(6-MP)の投与量や治療中に発現する副作用発現に遺伝情報が関連しているかについて、6-MP代謝関連酵素及びトランスポーターの遺伝子解析と患者臨床情報から評価を行った。 研究協力施設にて小児ALL患者105例に対して、インフォームドコンセントを取得した後、Thiopurine S-methyltransferase (TPMT)、Inosine triphosphate pyrophosphatase(ITPA)、Methylene tetrahydrofolate reductase(MTHFR)の酵素活性を減弱させる一塩基多型 (SNP)の解析、薬剤排出トランスポーターの1つであるMulti-drug resistant protein 4 (MRP4)のSNPの解析を行い、患者臨床情報収集を行った。マイナーアレル頻度は、TPMT A719Gで0.016、ITPA C94Aで0.191、MTHFRA C677T、A1298Cでそれぞれ0.416、0.133であった。MRP4 G2269A、C912A、G559Tでそれぞれ0.119、0.230、0.134であった。 6-MP代謝関連酵素による小児ALL患者維持療法中の副作用として、白血球減少と肝機能障害との関連性を検討した。TPMT遺伝子変異を持つ全ての患者は白血球減少、肝機能障害を経験していた。また、ITPA C94A遺伝子変異の患者では、野生型に比べて有意に肝障害を経験していた。MRP4 G2269Aの変異を持つ患者では白血球減少発現頻度が統計的有意に高くなっていた。 以上の結果から、6-MP薬物動態に影響を及ぼす遺伝多型は治療中の副作用発現予測因子になり得ることが明らかとなった。本結果は、小児ALLの治療を適正化するための有用な情報となる。
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