Amyloid-β(Aβ)の血液脳関門(blood brain barrier:BBB)透過における正常型プリオン蛋白(cellular prion protein:PrP^c)の調節メカニズム解明を目的とし、本年度は(1)PrP^c発現抑制細胞におけるAβの細胞内取り込み能の解析、(2)Prp^c発現誘導細胞におけるAβの細胞内取り込み能の解析、以上の項目について研究を行った。 (1)PrP^cと相互作用することが報告されている低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質1(LRP1)とP-糖蛋白(P-gp)の発現・機能を抑制したマウス脳血管内皮細胞株(MBEC4 cell)のAβ細胞内存在量を解析した。LRP1のknockdownはAβ細胞内存在量を減少させ、P-gpの阻害剤であるverapamilはAβ細胞内存在量を増加させた。しかし、PrP^cをknockdownしたMBEC4 cellでは、negative control siRNA処置細胞と比較して、Aβ細胞内存在量に差は認められなかった。 (2)PrP^c過剰発現MBEC4 cellを確立した。現在、Aβ細胞内取り込み能に関して解析中である。 以上のことから、MBEC4 cellにおいてLRP1とP-gpはAβ輸送分子として機能していることが明らかとなった。しかし、本研究ではPrP^cはAβの輸送に関与しないことが示唆された。他の報告ではAβとPrPcが結合することが報告されているため、PrP^c過剰発現MBEC4 cellでの解析を含め、より詳細な解析が必要である。
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