研究概要 |
乳がん治療薬のタモキシフェンの再発予防効果には個人差が存在することが知られており5年無病生存率は81.4%である.本研究の目的は,薬物トランスポーターの遺伝子多型を網羅的に解析することにより,タモキシフェンの術後補助療法の効果および血中濃度と関連する遺伝子多型マーカーを同定することである.ABCB1(MDR1),ABCC2(MRP2)およびABCG2(BCRP)について,それぞれ28,11および12種類のhaplotype-tagging SNPs(tag SNPs)を選択し,合計51SNPsをInvader法により判定した.検討した51 tag SNPsのうち,ABCC2遺伝子の2SNPs(rs3740065およびrs11190303)は,無再発生存期間と有意な関連を示した(log-rank P=0.00020および0.00048).これらの2SNPsは強い連鎖不平衡にあった(D'=0.97,r2=0.79).rs3740065G/G患者と比較したとき,rs3740065A/GおよびA/A患者でのハザード比は3.52(95%信頼区間,0.46-26.79)および10.64(95%信頼区間,1.44-78.88 ; P=0.00017)であった.ABCB1およびABCG2遺伝子のtag SNPsはいずれも有意な関連を示さなかった(log-rank P>0.083).さらにABCC2とCYP2D6遺伝子型との組み合わせの検討を行ったところ,二つの遺伝子のリスクアレルの数の合計が増加するのに伴い,無再発生存期間が有意に短くなった(log-rank P=0.000000083).リスクアレルの数が2,3および4の患者では,1以下の患者と比較して,ハザード比は4.93(95%信頼区間,0.61-39.63),19.98(95%信頼区間,2.69-148.65)および45.25(95%信頼区間,5.58-366.81)であった.ABCC2 rs3740065遺伝子型では,血漿中エンドキシフェンおよび4-水酸化タモキシフェン濃度いずれとも有意な関連は認められなかった(Kruskal-Wallis P=0.68および0.26).以上の結果より,ABCC2のSNPがタモキシフェンの再発予防効果に関連することが示唆された.
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