研究課題
ヒトには本来、外部から侵入した異物を排除して生体を守る免疫システムが備わっているが、一端、免疫バランスに破綻が生じると、感染症や自己免疫疾患など様々な疾患を引き起こすことが知られている。近年、これら免疫疾患の克服に向けて、免疫を正負に自由自在に制御し、免疫応答のバランスを是正し得る"Immunomodulator"の開発が待望されている。そこで本研究では、免疫応答制御の根幹を担うサイトカインに着目し、それらの免疫誘導機序の解析や機能改変型サイトカインの創製を試みた。本年度は、昨年度までに構築した構造変異インターフェロン(IFN)提示ファージライブラリを用いて、その中から、抗ウイルス活性に優れた機能改変型IFNの創製を図った。構造変異IFN提示ファージを用いて、IFNAR2に対する結合力の基づくセレクションであるパンニング操作を複数回繰り返した。各パンニングラウンド後に回収したファージをモノクローン化し、個々のクローンについてELISAにより結合力を評価した結果、パンニングを繰り返すにつれて、IFNAR2に高親和性を示すクローン数が増大していた。さらに、シンドビスウイルスに対する抗ウイルス活性を指標に評価したところ、野生型IFNよりも強い抗ウイルス活性を有するIFN変異体を複数単利・同定することに成功した。今後は、これら活性増強型変異体の粘膜ワクチンアジュバントとしての有用性評価を行うとともに、これら情報を活用することで、免疫誘導制御能に優れた新規"Immunomodulator"の開発に大きく貢献することが期待される。
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Biomaterials
巻: 32(23) ページ: 5498-504
10.1016/j.biomaterials.2011.04.018