SADキナーゼが神経細胞極性化を制御する分子機構について、そのシグナル伝達経路を明らかにするため、酵母two-hybrid法を用いた結合分子の検索を行ったところ、asparaginaseとSAPS2分子が同定された。後者は特にProtein phosphatase regulatory subunitとして同定されたスキャホールド蛋白であり、神経系にも広く発現している。もしもSAPS2がSADキナーゼに結合していれば、SAPS2は蛋白質リン酸化・脱リン酸化の制御を両者とコンプレックスを形成することにより司っているという機能が考えられる。COS7細胞に於いて、FLAG-tagのついたSADキナーゼをSAPS2と共発現させM2-agaroseによって免疫沈降すると実際にSAPS2が落ちてくる。従って、この結合は、酵母two-hybrid法の転写に関するアーチファクトではない。この結合がどの領域を介した結合であるのかを調べるために双方についてdeletion mutantを作製した。現在、それを用いたbinding assayを遂行中である。これまでの所、Protein phosphataseを含めた3者間の共沈は確認されていないが、可能性としては競合的な結合という様式も考えられる。SAPS2についてのsiRNAを用いた機神経細胞中の能阻害実験は効果を見せていないが、SAPSファミリーはSAPS1からSAPS3に至るまで神経系に発現しているので、機能的な重複である可能性が考えられる。
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