リンパ管は発生の段階で血管内皮細胞の一部からリンパ管内皮細胞に分化し最終的には血管と分離した独立した脈管系を形成するが、末梢組織では吻合することなく静脈角のみにおいて血管と吻合する構造になっている。これまでに血管とリンパ管の吻合・分離制御の機構は明らかになってない。本研究で我々は分子レベルで調べるために解析を行った。本年度は、1)野生型の胎児における静脈角の弁の構造、及び2)リンパ管に血液が見られるPlcg2ノックアウトの胎児における血管とリンパ管の異常吻合部位の同定、の二点に焦点をおいて研究を進めた。1)については胎生10.5~16日目までの野生型マウス胎児の冠状面切片を作製し、免疫組織染色を行った。その結果、静脈角の弁は血管内皮細胞とリンパ管内皮細胞による二層の内皮細胞及び細胞外マトリクスにより形成されることを見出した。2)については血管とリンパ管の異常吻合部位を同定するため14日目のPicg2ノックアウト胎児の卵黄嚢静脈からリンパ管のマーカーの一つでpodoplanin抗体を蛍光ラベルさせ注射した。蛍光顕微鏡を用いて観察した結果、胎児の表面においてpodoplanin陽性の構造がランダムに存在することを見出した。さらに皮膚のホールマウント切片を作製し調べた結果、これらの吻合は末梢部位に存在することとリンパ管内皮細胞が血管内腔に突起を伸びていることを見出した。これちの結果により、Plcg2ノックアウト胎児の末梢に見られる血管とリンパ管の異常吻合は発芽するリンパ管内皮細胞が血管に伸び込んでできたことが示唆された。血管とリンパ管の吻合・分離制御の機構を解明するために、静脈角の弁とPlcg2で見られる異常吻合の構造及び形成過程をさらに詳しく調べる必要がある。
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