研究課題/領域番号 |
22790188
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
江上 洋平 香川大学, 医学部, 助教 (80432780)
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キーワード | Rab35 / phagocytosis / macrophage / ACAP2 / ARF6 / cytoskeleton / vesicle transport / effector |
研究概要 |
本研究課題では、ファゴゾーム形成分子Rab35について、その下流のエフェクター分子を同定し多角的手法で機能解析することにより、異物貪食過程でみられるダイナミックな膜輸送と細胞骨格の協調メカニズムを明らかにするとともに、Rab蛋白質の膜-細胞骨格シグナル伝達アダプター分子としての新たな役割を提起することを目的としている。前年度までにFcレセプター介在性ファゴサイトーシス経路においてRab35のエフェクター分子候補であるACAP2が活性化Rab35に依存して貪食カップに集積し、また両分子の共発現系において著しい貪食抑制効果を示すことが明らかとなっていた。そこで、平成23年度はACAP2の下流のシグナル伝達経路について詳細な解析を行った。ACAP2はARF6を不活性化するGAP(GTPase-activatinprotein)であることから、活性化型Rab35(Rab35-Q67L)とACAP2の共発現系で確認された貪食抑制効果がARF6の活性調節を介したものであるかどうか検討した。ARF6に対するGAP活性を欠損したACAP2変異体(ACAP2-RQ)をRab35-Q67Lと共にMW264マクロファージに過剰発現させ、貪食活性を定量的に評価したところ、ACAP2の野生型とRab35-Q67Lの共発現系で認められた相乗的な抑制効果がACAP2-RQ-Rab35-Q67L共発現系では消失することが明らかとなった。このことからRab35はACAP2を膜にリクルートすることによりARF6の活性を低下させ,ファゴサイトーシぢを制御している可能性が示唆された。次に、活性化Rab35の安定発現細胞株を樹立し、この細胞株におけるARF6の活性化状態を調べた。活性化ARF6に特異的に結合するGST-GGA3蛋白質を用いてGST pull down assayを行ったところ、Rab35-Q67L発現細胞においてARF6の活性がコントロール(GFP発現系)に比べて有意に低下していることが明らかとなった。また、Fcレセプター介在性ファゴサイトーシス過程において通常みられるARF6の活性化も抑制されていた。上記の研究成果は国際学術誌J.Cell.Sci.に掲載され、In this issueの中でも取り上げられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Fcレセプター介在性ファゴサイトーシスに深く関与するRab35の下流エフェクター分子ACAP2を同定することできた。また、両因子による貪食制御メカニズムを明らかにすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
Rab35及びACAP2はFcレセプター介在性ファゴサイトーシス過程において重要な役割を担っていることが明らかとなった。しかしながら、Zymosanの貪食過程など他自然免疫貪食モデルでの両因子の重要性については不明である。今後は、Zymosan貪食過程におけるこれらの蛋白質の関与の有無と新たなシグナル伝達経路を明らかにしていく予定である。
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