1.下垂体前葉細胞の一つである濾胞星状細胞(FS細胞)が、細胞外マトリックス、特に、基底膜成分であるラミニンとの相互作用(マトリクライン作用)によってFS細胞間ギャップ結合形成が促進されることを、FS細胞特異的にGFPを発現するトランスジェニックラット(S100b-GFP rat)の初代培養のliving観察、電子顕微鏡観察等により明らかにし、学術論文に掲載された。 2.FS細胞がマトリクラインによって発現変化を示す遺伝子群をマイクロアレイによって網羅的に解析した。その中から、細胞外マトリックスに対するレセプターであるインテグリンを介した、FS細胞内のマトリクラインシグナル伝達関連遺伝子候補をピックアップし、さらに、マトリクラインによって誘発されるFS細胞分裂に関わるシグナル伝達因子を同定し、そのシグナル伝達機構を実証した。 3.FS細胞間では、ギャップ結合を介したネットワークを形成し、情報伝達系を有する。このネットワークは、初代培養によって、再構築することを我々は既に明らかにしている。そして、ネットワークを再構築する過程で、FS細胞が突起状の細胞質を伸長させ、正確に周囲FS細胞と結合する。この現象は、近隣のFS細胞に対する何らかの誘導因子の存在を強く示唆するものであった。現在、我々は、その誘導因子とレセプターの候補を選定し、それが、下垂体前葉の中でFS細胞特異的に産生されることを明らかにした。今後、誘導因子を同定し、マトリクラインによるFS細胞ネットワーク形成促進の制御機構を明らかにする。
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