1.濾胞星状細胞(FS細胞)分裂を引き起こすシグナル伝達の解析 ラミニンなどの細胞外マトリックス(ECM)コート上で下垂体前葉細胞初代培養を行うと、非コート上に比べFS細胞が細胞分裂を引き起こすことを既に報告している。本研究では、ラミニン存在下で、そのレセプターであるインテグリンβ1を介して、カベオリン3の発現を増加させ、それに伴い、MAPK経路が活性化され、サイクリンD1遺伝子発現量も増加し分裂が誘起されるシグナル伝達を明らかにした。 2.FS細胞におけるマトリックスメタロプロテアーゼ9(MMP9)の発現解析 一般に、細胞はECMを認識後、マトリクスメタロプロテアーゼ(MMP)により、ECMを消化して、移動することができる。FS細胞は、ラミニンを消化する酵素であるMMP9を発現し、その発現量はラミニンによって増加し、MMP9のsiRNA及び、インヒビター添加により、ラミニンによるFS細胞の移動、FS細胞同士の接着が阻害された。以上から、ECMによるFS細胞移動メカニズムを明らかにした。 3.FS細胞ネットワーク形成誘導因子の解析 FS細胞間では、ギャップ結合を介したネットワークを形成し、情報伝達系を有する。このネットワークは、初代培養によって、再構築することを我々は既に明らかにしている。そして、ネットワークを再構築する過程で、FS細胞が突起状の細胞質を伸長させ、正確に周囲FS細胞と結合する。この現象は、近隣のFS細胞に対する何らかの誘導因子の存在を強く示唆するものであった。本研究では、FS細胞にCXCモチーフの一つであるCXCL12とそのレセプターCXCR4の高い発現を明らかにした。さらに、マトリゲルインベージョンチャンバーを用いてCXCL12に対する走化性、浸潤性アッセイ行なったところ、FS細胞だけが走化性及び浸潤性を示した。以上から、FS細胞は、CXCL12を発現し、パラクライン的に周囲FS細胞に作用させることで、FS細胞ネットワークを形成する、その制御機構を明らかにした。
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