研究課題/領域番号 |
22790191
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
松崎 利行 群馬大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (30334113)
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キーワード | アクアポリン2 / リン酸化 / 細胞内分布 / 細胞内移送 / 水チャネル |
研究概要 |
バソプレッシンは、腎臓の水チャネルであるアクアポリン2の細胞内分布を変化させ、水の再吸収量を調節する。本研究の目的は、バソプレッシンによる、アクアポリン2のリン酸化が、細胞内分布・細胞内移送を調節するメカニズムを解明することである。23年度はアクアポリン2の4つのリン酸化部位のうち、256番目のセリン(S256)のリン酸化を認識する抗体を用いた解析をおこなった。バソプレッシン欠損ラットを用いた検討では、バソプレッシンの存在しない状態でもS256のリン酸化はある程度みられ、アクアポリン2は細胞内に分布するが、バソプレッシンを投与するとリン酸化が増加し、細胞膜表面に多く分布することが判明した。このことからS256はバソプレッシン非依存的にリン酸化されうるが、細胞膜への移行にはバソプレッシンが必要であることが示唆された。さらに23年度は269番目のセリン(S269)のリン酸化を認識する抗体の作製も試み、リン酸化ペプチドカラムおよび非リン酸化ペプチドカラムを用いた精製により、特異的な抗体を得ることができた。この抗体を用いた免疫染色では、S269リン酸化アクアポリン2は、細胞膜表面にのみ分布することがわかってきた。このことから、細胞膜表面へ移動したアクアポリン2の細胞膜への係留とS269のリン酸化の関係が示唆された。 さらに23年度には、MDCK培養細胞を用いた解析で、アクアポリン2の細胞膜表面からの取り込み過程に関する検討をおこなった。その結果、アクアポリン2は、細胞膜の微小膜ドメイン構成タンパク質であるカベオリン1と密接に関係しながら、細胞膜表面から細胞内へと取り込まれることを明らかにすることができた。 これらの成果は学術集会で発表し、一部は学術雑誌に掲載が決定し、一部は投稿準備中である。アクアポリン2の細胞内移送を調節するメカニズムを解明するうえで、重要な知見を得ることができ、次年度のさらなる解析へと発展するものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アクアポリン2の S256のリン酸化を認識する抗体を用いて、ラット腎臓で細胞内分布の変化を明らかにすることができた。さらに S269のリン酸化を認識する抗体も作製し、特異性の検討ののちにラット腎臓で細胞内分布の変化の一部を明らかにすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
ラット腎臓でのアクアポリン2の解析はおおむね順調に進んでいるが、リン酸化と細胞内分布の変化についてさらに詳細な解析が必要と思われ、生化学的検討も含めて今後進めていく予定である。また、アクアポリン2遺伝子を導入した培養細胞系でのリン酸化と細胞内分布の関係に関する種々の解析も必要であり、今後の課題である。
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