研究概要 |
獲得免疫応答誘導のための中心的な「場」であるリンパ節では、緻密なネットワーク構造を形成する間葉系ストローマ細胞が免疫細胞活動を支えている。しかし、その基本的性状や分子基盤に関しては良く解っていない。本研究では,マウスのリンパ節ストローマ細胞に発現することが示唆された因子について詳細な機能解析を行い、それらがリンパ球などの免疫細胞機能、特にリンパ組節内の移動に影響を及ぼし、免疫応答制御に関与する可能性の検証を目的とした。 この中で、リゾフォスファチジン酸(LPA)合成酵素であるAutotaxinがリンパ節のストローマ細胞に転写レベルで高発現されていることを見出し、抗体を用いてタンパク質発現を確認した。LPAおよびAutotaxinは様々な細胞の遊走活性を上昇させることが知られているため、リンパ節間質におけるリンパ球遊走への関与が疑われた。そこで、リンパ節スライス培養と二光子励起レーザー顕微鏡を用いたライブイメージングにより検証し、Autotaxinの酵素活性やLPA受容体シグナルを阻害する薬剤を加えた結果、T細胞の間質遊走を有意に阻害することが明らかになった。一方、LPAは試験管内におけるT細胞のランダムな遊走活性を上昇させ,しかもケモカインによる遊走活性を増加させることも明らかになった。 以上のことから,ストローマ細胞が産生するLPAがリンパ節内におけるリンパ球の動態を制御し、免疫応答の調節に関与していることが示唆された。ストローマ細胞がこのようないくつかの分子メカニズムによりリンパ球と相互作用を行なっていると考えられる。
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