近年、脊髄グリア細胞が炎症性サイトカインを遊離することで、難治性疼痛の発症や維持に重要な役割を果たすことが示唆されている。この炎症性サイトカインであるInterleukin-1 (IL-1)ファミリーのなかでも、IL-1βが疼痛発現に重要であることが数多く報告されてきた。しかしながら、同様にIL-1ファミリーの新規サイトカインであるIL-18の疼痛との関連はほとんど報告されていない。我々は、このIL-18に着目し、末梢神経損傷後に脊髄マイクログリアにおいて増加し、神経障害性疼痛の発現に関与することを明らかにしてきた。一方、システインプロテアーゼであるcaspase-1は炎症性サイトカインであるIL-1βやIL-18を活性化することが知られているが、神経障害性疼痛の発現におけるcaspase-1の役割は未だ不明である。そこで、我々はcaspase-1などのIL-18活性化に関わる因子に着目し、神経障害性疼痛の発症への関与について解明することを目的として研究を行った。その結果、末梢神経障害モデル動物において脊髄におけるcaspase-1の著明な発現増強が引き起こされ、疼痛発現機構に関与していることを明らかにした。その詳細な結果としては、脊髄マイクログリアにおいて神経障害後早い段階よりcaspase-1の発現増強が確認され、この発現増強は、神経障害時に引き起こされるIL-18の発現増強同様、脊髄マイクログリアにおいて引き起こされていた。このことは、脊髄マイクログリアにおけるcaspase-1の発現増強がIL-18を活性化し、疼痛発現に重要な役割を果たしていると考えられ、caspase-1/IL-18経路阻害薬が神経障害性疼痛治療薬としての可能性を示唆したものであると考えられる。
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