大脳皮質の層構造形成過程における神経細胞の移動および配置に関わる分子基盤は徐々に明らかにされつつあります。しかしながら、それらの分子が'いつ''どこで'機能するのかというような時空間的制御機構については未だ何もわかっておらず、この分野の理解が進まないことの理由の一つとなっています。そこで私は新奇蛍光プローブを開発することにより、層構造形成シグナルと神経細胞の移動を脳スライス上で同時に可視化し、いつどこでそのシグナルが活性化し、神経細胞が配置情報を受容しているのかを明らかにすることを目的に本研究を進めました。 神経細胞が配置情報を受容する様子を可視化するために、大脳皮質層構造形成シグナルの一つであるリーリンシグナルを可視化するプローブを開発することにしました。このプローブはシアン(CFP)および黄色(YFP)蛍光タンパク質を用いたFRET型プローブであり、Dablのリン酸化を検出するものです。このプローブはDablがリン酸化されるとSH2ドメインと結合することを利用して、CFPとYFPを近接させ、紫色(440nm)の光で励起したときに、水色(480nm)の蛍光から黄色(530nm)へ蛍光が変化することを検出することにより、リーリンシグナルのオン・オフを可視化します。 DablとSrcおよびFynのSH2ドメインをCFP、YFPに結合させたコンストラクトを作成し、培養細胞に導入しました。そこに非特異的リン酸化を引き起こすオルソバナジン酸ナトリウムを添加したところわずかながらDablのリン酸化に反応するプローブを獲得しました。今後はこのプローブのdynamic rangeを広げて、脳スライスへの適用を試みる予定です。
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