研究概要 |
本研究では越シナプス性ニューロン連絡を神経解剖学的に解析することにより、前頭葉から視覚経路を構成している背側経路のMT野・腹側経路のV4野へ投射するトップダウン式視覚情報処理ネットワークの解明を目指す。4頭のマカクサルに固視課題を習熟させた後、様々な視覚刺激(色、動き、形態を変化させた視覚刺激)を中心視野・周辺視野の受容野に提示した上でMT野・V4野を電気生理学的に同定し、それぞれに狂犬病ウイルスを注入した。2次ニューロン・3次ニューロン結合を調べるため個体の生存日数を変化させた上で灌流固定した。 まず、外側膝状体(LGN)及びLGNからの入力層である一次視覚野(V1)の各層からV4野、MT野への投射を調べた。結果、LGNからV1への入力層を基準にとると、V4野とMT野とで介在するシナプス数が異なること、MT野は主にLGNの大細胞系からの入力を受けるのに対し、V4野では大細胞層及び小細胞層の双方から入力を受けていることが明らかになった。この結果は論文として発表された(Ninomiya,Sawamura et al,Cereb Cortex 2011)。 また、前頭葉からV4野、MT野への投射に関して二次性ニューロン結合を調べた所、MT野へは補足眼野と46野からの投射がメインである一方、V4野へは46野からの入力がメインであること、予想と反してこれ以外の領域からは投射が非常に少ないことが解明された。この結果は2011年に米国のワシントンDCで開催された北米神経科学学会(Society For Neuroscience 2011)にて発表された(Ninomiya, Sawamura et al)。
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