研究課題
本研究課題では、我々がinvivo系の実験で明らかにしている環状ホスファチジン酸(cPA)とその誘導体(2ccPA)の持つ鎮痛作用について、その作用機序を明らかにすることを目指している。TRPチャネルを発現させた細胞にチャネル活性測定用イオンインジケーターを取り込ませ、痛み刺激(カプサイシン)に伴うチャネルの活性化を、刺激前後の蛍光量の変化で測定する方法を用いて、2ccPAが痛み刺激が引き起こすTRPチャネルの活性化に与える影響を調べた。このとき、2ccPAはリゾホスファチジン酸5レセプター(LPA5)を活性化することが知られていることから、TRPチャネルを発現させた細胞にLPA5を共発現させた。解析の結果、2ccPAによるLPA5レセプターの活性化はTRPV1の活性化には影響を与えないことが示唆された。今後TRPV1以外のTRPチャネル活性化に与える2ccPAの影響を調べて行く予定である。また、2ccPAが既知のLPAレセプター以外を標的としている可能性も考えられるため、2ccPAと相互作用するタンパク質の単離・精製も行っていく。本研究課題の最終目的は、cPA誘導体を疼痛治療へ応用させることである。これまでに我々は種々のcPA誘導体を合成してきた。今回は、2ccPAのほかに3ScPAを合成し、3ScPAの痛み抑制効果の有無、またその強度についても検討した。3ScPAはcPAと同様に痛み抑制効果を持つことが明らかになった。しかしながら、その効果は2ccPAには及ばなかったことから2ccPAが現在のところ最も痛み抑制効果が強いcPA誘導体であることが示された。今後2ccPAを中心に研究を進めて行く。
2: おおむね順調に進展している
研究の目的に記載した、LPAR5活性化に伴うTRPチャネルの活性への影響解析を順調に進め、LPAR5はTRPチャネルのうちTRPV1の活性化には影響がないことを示唆する結果を得た。
2ccPAによるLPA5活性化はTRPV1の活性には影響がないことが示唆されたことから、今後は、TRPV1以外のTRPチャネルへの影響を調べていく。また既知のLPAレセプター以外のcPAに結合するタンパク質の単離・精製を行っていく予定である。
すべて 2012 2011
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (12件) 図書 (1件)
Biochem.Soc.Trans.
巻: 40 ページ: 31-36
10.1042/BST20110608
月刊バイオインダストリー2012月2月号
巻: 2月号 ページ: 46-52
Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters
巻: 21 ページ: 4180-4182
DOI:10.1016/j.bmcl.2011.05.083
Molecular Pain
巻: 7 ページ: 33
DOI:10.1186/1744-8069-7-33
Cytologia
巻: 76 ページ: 73-80
Biochem Biophys Acta-Molecular and Cell Biology of Lipids
巻: 1811 ページ: 314-322
10.1016/j.bbalip.2011.02.005