研究概要 |
本年度は、癌細胞に異常発現する神経型ナトリウムポンプNa^+, K^+-ATPase α3-isoform (α3NaK)の癌細胞におけるナトリウムポンプ活性に対する寄与、細胞内分布および癌細胞における生理機能を明らかにすることを目的とした研究を行った。 まず、11症例の肝細胞癌組織および近傍の非癌組織について、ナトリウムポンプの各アイソフォームの癌組織における発現量変化率と癌組織におけるナトリウムポンプ活性変化率の相関関係を調べたところ、癌組織におけるα3NaKの発現増加率とポンプ活性上昇率との間に有意な相関が見られた。また、癌組織において上昇するナトリウムポンプ活性のNa^+親和性は、α3NaKのNa^+親和性と一致した。以上より、肝細胞癌組織におけるナトリウムポンプの活性上昇はα3NaKの発現増加に起因することが示唆された。 次に、各種オルガネラマーカーおよび分泌小胞マーカーとの免疫共染色を行い、細胞内におけるα3NaKの発現分布について検討した。その結果、α3NaKは小胞体に一部局在していたが、大部分はrabタンパク質含有小胞に局在していることがわかった。 癌細胞におけるα3NaKの生理機能および結合タンパク質を明らかにする目的で、ドキシサイクリン誘導型のα3NaK shRNAベクターを肝細胞癌由来HepG2細胞と大腸癌由来HT-29細胞に導入し、誘導型α3NaKノックダウン細胞を構築した。現在この細胞を用いて研究を行っている。また、HT-29細胞においてα3NaKのsiRNAを用いた一過性ノックダウン実験により、α3NaKが癌細胞の生存に関与している可能性が考えられた。
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