アポトーシスは、生体にとって不要になった細胞や有害となる細胞を除去する生理的な細胞の死である。アポトーシスにより死滅した細胞は、ホスファチジルセリンと呼ばれる細胞膜のリン脂質を細胞外に提示し、これをマクロファージなどの食細胞が認識して貪食除去する。私たちは以前、マクロファージから分泌されるMFG-E8や、マクロファージ上の蛋白質TIM4が、このホスファチジルセリンと結合することにより、マクロファージによるアポトーシス細胞の貪食を促進することを見出した。ところが、これらの分子がどのように協調的に働き、貪食を促進しているのかは分かっていなかった。昨年度私たちは、本来アポトーシス細胞を貪食できないBaf3細胞にこれらの分子を発現させることによって、マクロファージによる貪食を完全に再構築することに成功した。また、Tim4はアポトーシス細胞を繋ぎ止めるが取り込むことができず、Tim4により繋ぎとめられたアポトーシス細胞が取り込まれる為には、MFG-E8とインテグリンが必要であることを見出し、アポトーシス貪食の動作原理は「繋ぎとめ」と「取り込み」の2段階であることを見出した。一方、Tim4を過剰発現させたNIH3T3細胞は、MFG-E8が存在しなくてもアポトーシス細胞を効率よく貪食することができる。そこで、NIH3T3細胞にはTim4と細胞外または細胞膜内で結合する共受容体が存在すると考え、その同定を試みた。すなわち、Tim4を過剰発現させたNIH3T3細胞を大量に培養し、Tim4に対するモノクローナル抗体を用いて精製を行い共沈してくる蛋白質を検出したところ、160kDと130kDのバンドが検出された。そこで、質量分析によりこれらの分子を同定を行い、二本のバンドから共にmyoferlinという分子を同定した。今後はmyoferlinによる貪食制御の分子機構を解明することを目標にする。
|